若いがん患者はなぜ医師介助自死(MAID)を選ぶのか?

Source: JAMA Oncology, Vol. 12, No. 6
Title: Medical Assistance in Dying Use Among Adolescent and Young Adult Patients With Cancer
Authors: Emilie Muth, MN; Nicole Maseja, BA; Andrew Harper, MSc et al.

JAMA Oncologyに掲載された、AYA世代(思春期・若年成人)の進行がん患者がなぜMAID(医師介助自死)を選択するのかを探った論文からの知見をまとめました。

この研究は、カナダ・アルバータ州でMAIDを利用した15〜39歳で診断されたがん患者34例(45歳未満でMAID利用)を対象とした後ろ向き研究です。

MAID(Medical Assistance in Dying)とは
カナダでは、耐え難い苦痛を伴う回復不能な病気に対して、本人が希望し複数の医師が適格と判断した場合、医師の介助によって人生を終えることができます。

決して「治療を諦めた」わけではない

今回解析された34人(中央値約38歳、子育て中の人も含む)は、決して治療を諦めた人達ではありませんでした。

半数以上は複数治療を受けており、十分に治療を受けた上での選択でした。

最大の苦痛は「痛み」ではなく「喪失感」

患者が苦しんでいた最大の理由は痛み(63%)ではなく、「人生に意味を与えていたことが出来なくなった」(80%)ことでした。「自分らしく生きられなくなった」ことへの苦痛が強く表れています。

「友人達は子育てや仕事を続けているのに、自分にはもう共通の話題がない」
— AYA世代特有の苦痛(結婚、出産、子育て、昇進など、皆が未来へ進む中、自分だけが死へ向かっていく孤独感)

症状の推移とMAIDへの道のり

ESAS(エドモントン症状評価システム)を用いた死亡前1年間の症状推移の分析(論文のFigure 2, 3)によると、死亡11~6か月前までは比較的安定していますが、死亡約5か月前から景色が一変します。

痛み、倦怠感、食欲低下、不安、抑うつ、全身状態が急激に悪化し、死亡3か月前には評価患者の70%が「High Symptom Complexity(複数症状が重なり高度の苦痛状態)」に到達します。

しかし、患者はすぐにはMAIDを選ばず、数ヶ月間耐えた末に最終的にMAIDを選択しています。これは衝動的な決断ではなく、長期間続く苦痛の末の選択であることがわかります。

専門緩和ケア導入の遅れ

著者らが問題視しているのは、緩和ケア導入の遅さです。患者全員が最終的には専門緩和ケアを受けていましたが、半数以上は死亡3か月以内に導入されていました。苦痛が急増し始める時期(5ヶ月前)と比べるとかなり遅く、著者らは「進行がん診断時、あるいはESAS悪化時点で専門緩和ケアへ紹介すべき」と提言しています。

カルテ記録から見えた4つの共通テーマ

結論:
この研究は安楽死の是非を問うものではなく、「若い進行がん患者が本当に苦しんでいるものは何か」を教えてくれます。医療者は身体的症状ばかりに目を向けがちですが、患者が失っていたのは将来、キャリア、家族との時間、自分らしさでした。AYA患者の苦痛をもっと早く拾い上げる必要性が示唆されています。

𝕏(旧Twitter)での反応・議論

論文公開直後から、医療関係者や公式アカウントを中心に共有されています。主な投稿は以下の通りです。